PEOPLE

那珂川の人

ジュエリー作家

三森 勇/志帆

「蔵」をセルフリノベーションし、彫金のアトリエを開設。カフェ・撮影スタジオとして「THREE TREES」を併設。イギリスでジュエリーを手がけ、帰国後は結婚指輪のオーダー、手作り指輪のワークショップも行う。

愛する⼈のために、⼿作りの指輪。

南畑の不⼊道地区にある⼿作り結婚指輪のアトリエ、THREE TREES。
ここではカップルが、オリジナルの結婚指輪を⾃分たちで作ることができる。三森勇さんが技術⾯のサポート、奥さんの志帆さんは制作する⼆⼈の様⼦をカメラで記録に残してくれる。

勇さんは以前、カップルのリクエストに合わせてオーダーメイドの指輪を作っていたという。指輪を⼿作りしてもらうスタイルに切り替えたのは、知り合いに指輪の作り⽅を教えながら作ってもらったことがきっかけ。「作り⼿が想いを込めて作ったとしても、⼆⼈が作ったリングの価値にはかなわない」と思ったそう。

「結婚指輪を⼿作りする」と聞くと誰のものを作ると考えるだろう?「⾃分の分と相⼿の分、どちらを作りますか?」と聞かれ、私は正直ハッとした。相⼿の指輪を作るという発想がなかったのだけれど、⾔われてみれば「相⼿の結婚指輪を作る」、「相⼿の作ったものを着ける」なんてとてもロマンチック。

実は撮影のため、少しだけ指輪の制作体験をさせてもらった。指輪の原型になるWAXというロウソクのような素材を、専⽤の⾦属の⼯具で指のサイズに⽳を広げた後、ギコギコギコギコと、少しずつ⽷ノコで余分な部分を慎重に、丁寧に切っていく。あまり⼒を⼊れる必要はなく、サクサク切れてとっても楽しい。これを結婚する⼆⼈が⼀緒に作るのは、絶対楽しい。

好きな⼈のために作るのは少しプレッシャーだろうけど、愛する⼈に作ってもらった指輪を⼀⽣着けると考えるとキュンとした。

三森さん夫婦の結婚指輪ももちろん⼿作り。作り合いっこしたという。指輪作りのプロ、勇さんの指輪を作った志帆さん。さぞかし⼤変だっただろう…と思いきや、⼊籍⽇までの時間がせまっていて、慌てて作ったという。

「勇さんは職⼈だからプレッシャーはありましたが、削り⽅は任せると⾔われたので、⾃分の思うように削ってみました。初めての指輪作りでしたが、楽しかったです!」(志帆さん)

「⾃分が着けるのってどんな指輪だろうってイメージが出てこなかったんです。お客さんに⾒られるって意識もあったけど、思いつかなくて。だけど相⼿に作ってもらえれば、どんなデザインに仕上がってもそれが必然のデザインだと思って、志帆に託したんです。とりあえずサイズが合うもので、⾓がちょっと取れていて、尖りすぎないで、とだけリクエストして。あとはどんな⾵に削ってもいいよって⾔いました」(勇さん)

バタバタと作ったけれど「思いはちゃんと⼊ってる…と思うからね」とちょっと照れ気味の志帆さん。

「急いで作ったとしても、相⼿に作ってもらったってことで素敵な物になるし、後からこうやって話すじゃないですか。そうして思い出深いものになっていくっていう。物語、ストーリーがどんどん作られていくっていうね。指輪にも、⼆⼈の物語がある」(勇さん)

「何かを作り出して⼈が喜ぶというのが好きなんだと思う」という勇さん。「喜ばせたい」の⽅が前に出て、お客さんにもつい⾊々とサービスしてしまうんだとか。

モノづくりが好きになったきっかけは、このTHREE TREESの建物にあるという。ここは元々はおじいさんの蔵で、農機具やナイフ、ノコギリなどが置いてあり、⼩さいころそれらでよく遊んでいたそう。

「そこから僕のモノづくりの原点が芽⽣えてきた気がします。⼤⼈になるにつれて、⾃分は何をしよう?ってなった時に普通のサラリーマンのイメージは全然なくて、何かしら物を作ったり、デザインするような仕事ができたらなと思って」(勇さん)

そんなモノづくりの出発点である南畑の魅⼒を勇さんに伺った。

「まずね、距離感が結構好きで。福岡市内とか街中との距離感がちょうどいいなって思って。

あと、みんなが思っているより⽥舎だと思う。猿も出るしね。制作中も猿がでたりするの」

イノシシやヘビ、タヌキにムカデ、などなどいろんな動物や⾍がいて困ることもあるが、⾃然の中にいると街中では気づかないようなことに気づかされたりもするそうだ。

「⿃のさえずりとか⾍の鳴き声とかで季節を感じるのもいい。それぞれの季節で匂いも違う。稲刈りの時は、稲を刈ったときの草のあの匂いとか、冬になったらまた匂いが変わる。季節をちゃんと⼈間として感じる、みたいな。それがすごくいいかな。

あとね、⼈もすごくいいと思う。朝店に来たら、果物とか野菜とかがテラスの卓球台の上に置いてあったり。近くのおっちゃん達が、急に原チャリで来て『これ⾷べてよ。はい。』って⾔い残してそのまま去っていく、とかさ。そういうのなんかいいなって思う。

これといってアクティビティがたくさんあるわけではないけど、気軽にくつろげる空間がある。⽇向ぼっこしに来る感覚でいいのかなって思う。頑張って『ドライブ⾏こう!』とかじゃなくて」

THREE TREES にはアトリエのほかカフェも併設されている。だから結婚指輪の相談のときはもちろん、コーヒーを飲みに気軽にふらっと遊びにいくこともできる。

余談だが、写真からも伝わるだろうが、勇さんと志帆さんはとっても仲良し。指輪を作り合うことでもカップルの仲は深まると思うけれど、三森さん夫婦からも幸せを分けてもらえそうで、新婚⽣活がさらに上⼿くいきそう…。将来結婚指輪をここで作れたらなぁ、と夢が膨らんでしまった。

写真と動画: 川嶋 克  インタビューと⽂: 藤本 千尋

インタビューは南畑美術散歩のHPから引用しています。(南畑美術散歩公式HP https://bijutusanpo.tumblr.com)

 

 

MAP

店名
THREE TREES
住所
那珂川市不入道242
電話番号
080-8438-1389
Webサイト
https://threetrees.style
一覧へ戻る